私は普段、新しい建物の企画やプランニングをしており、建物の完成イメージを伝えるためにパソコンで絵を描く仕事をよくしています。 その作業の中で、壁や床の素材をどれだけ丁寧に作り込んでも、最後に照明の光を配置するまではお部屋の本当の良さは伝わりません。 光が壁に落ちて、床に影が伸びることで、はじめて空間に奥行きが生まれるからです。 今日はそんな、毎日を少しだけ豊かにする照明の選び方についてお話ししようと思います。

一昔前の家づくりでは、どのお部屋にも天井の真ん中に丸くて大きな照明を一つだけ付けるのが当たり前でした。 もちろんお部屋の隅々まで明るくなってとても便利なのですが、私は建物を計画するとき、場所によって照明の種類をはっきりと使い分けるようにしています。
例えば、家族が集まるリビングや、家の顔になる玄関などは、天井に小さく埋め込むダウンライトという照明を使うことが多いです。
なぜかというと、天井に出っ張る照明器具そのものを目立たせたくないからです。 器具の存在感を消して天井をすっきりと平らなままにしておくことで、空間の邪魔をするものがなくなり、お部屋全体がとても広く洗練された印象になります。 視界が抜けるので、天井が少しだけ高くなったように感じる効果もあります。
反対に、丸くて大きなシーリングライトと呼ばれる照明は、寝室や子供部屋といった個室に配置するのが良いと考えています。 個室であれば、一つのスイッチでお部屋の全体をしっかりと均等に照らしてくれる実用性が一番大切だからです。 このように、すっきりと見せる場所と実用的な場所で器具をきっちりと分けるのが、失敗しないプランニングの第一歩です。
そして、リビングなどの基本の照明をダウンライトですっきりとさせたなら、ぜひ一つだけお気に入りの照明器具を取り入れてみてください。
一番おすすめなのは、ダイニングテーブルの上などに吊るすペンダントライトという照明です。 この一つだけは、コストを気にして無理に安いものを選ぶのではなく、ご自身が本当にかっこいいと思えるお気に入りの器具を探してみてください。 なぜなら、照明器具というのは朝起きてから夜眠るまで、毎日必ず目に入るものだからです。 何年経っても、ふと見上げるたびに嬉しくなってしまうような器具を選ぶことは、日々の暮らしに大きな満足感を与えてくれます。 毎日見るものに思い切って投資をするというのは、家づくりにおいて絶対に後悔しない価値のあるお金の使い方になります。
最後にもう一つ、最近よくご相談を受ける家の間接照明についてお話しします。
壁や天井を柔らかく照らす間接照明は、とてもおしゃれであこがれる方が大勢いらっしゃいます。 ですが、数多くの家を見てきたプランニングのプロとしての本音を言えば、無理に取り入れる必要はないと考えています。 住宅での間接照明は好き嫌いがはっきりと分かれますし、基本的には無くても日々の生活で全く困らないものだからです。 かっこいいからという理由だけでつくってしまい、結局一度もスイッチを入れていないというお家も少なくありません。
ただ、もし生活の中で特別な時間を過ごす習慣があるなら、間接照明は素晴らしい力を発揮します。
例えば、夜に夫婦でテーブルに向き合ってゆっくりと晩酌をする時間があるご家庭。 または、眠りにつく前のベッドルームで、静かに好きな本を読む習慣がある方。
そんな特定の目的がある場合は、直接目に入らない柔らかい光の間接照明がとても効果的です。 一日の終わりに脳をリラックスさせ、穏やかな気持ちにさせてくれるからです。
ただ何となく流行っているから取り入れるのではなく、自分たちがそのお部屋でどんな夜の時間を過ごしたいかを想像してみてください。 それこそが、本当に心が休まるお家づくりの大切なポイントになるはずです。
今日はここまで。