最近、芝生を扱う現場がありました。
私は普段、新しい建物の企画や土地利用の提案をするために、建物の完成イメージをパソコンで描く仕事をよくしています。 真っ白だった画面の中に建物を描き、そこに緑色の芝生を足すと、不思議なことに建物全体が急に生き生きとして、ものすごく立派に見えるようになります。 建物と植物というのは、それくらい相性が良いものです。
でも、パソコンの画面の中で緑色を塗るのは一瞬ですが、現実の世界でこの美しい緑を作るためには、実は見えない部分での工事がとても大切になります。 今日はそんな芝生と土のお金に関するお話しです。

芝生とひとくちに言っても実はいろいろな種類があります。 最近の現場では、お庭の工事にかかるコストを上手く抑えつつ、長く外で遊べるようにちょっとした工夫をしました。
それは敷地をすべて同じように芝生を張るのではなく、使う場所によって張り方と種類を変えるという方法です。
例えば、斜面になっていて雨が降るとすぐに土が流れやすい場所があります。 そんな場所には、丈夫な野芝という種類をシート状にしてペタッと張りました。 最初から四角いシート状になっているので、張ったその日から地面の土をしっかりと押さえて守ってくれます。
一方で、平らで子供たちが走り回ってハードに遊ぶ場所には、ティフトンという西洋の芝を選びました。 スポーツのグラウンドなどでも使われるくらい、踏まれることに強い芝生です。
しかもこの場所はシートを全面に敷き詰めるのではなく、間隔をあけて少しずつまばらに植えていく方法をとりました。 ちょうど田んぼの田植えのようなイメージです。
なぜそんなことをしたかというと、まばらに植えることで最初の材料費や芝生を運ぶためのトラックの運送費をグッと下げることができるからです。
ティフトンはとても成長が早く、あっという間に横に這うように広がってすき間を埋めてくれます。 毎週末にお庭を見るたびに、少しずつ緑色が広がっていく様子を観察することになります。 最初から完成品を買うのではなく、あえて少しすき間を残して、だんだんと緑の広場に育てていく時間そのものを楽しむ作戦です。 ただ安いものを買うのではなく、植物の性質を理解して無駄を省く、プロならではのコストダウンのテクニックです。
そして芝生を美しく保つために一番大切なのが、実は見えない水はけの対策です。
建物の基礎を作るとき、工事の車が入ったり重たい材料を置いたりして、土はガチガチに踏み固められます。 その水を通さなくなった固い土の上に、ただ薄い土を被せて芝生を張ったところで、強い雨が降れば水たまりになります。 そうすると芝生の根が腐ってしまいます。 これがいわゆる芝生が枯れる一番の原因です。
そうならないために、見えないところで様々な処理を行います。
まずは表面全体に少しだけ傾斜をつけて、水が自然と外へ流れる道筋を作ってあげます。 さらに、土の中に水を通す小さな穴がたくさん開いたパイプを埋め込みます。 土の深くに染み込んだ雨水を集めて、外へ逃がす仕組みです。 どうしても水が逃げにくい場所には、水通りの良い砂や特別な土を深いところまで分厚く敷いて、地面の下に水をたくさん染み込ませる工夫も必要になります。
これをやるのとやらないのとでは、数年後の芝生の育ち方に天と地ほどの差が出ます。
建物を計画するとき、どうしてもリビングの広さやキッチンの設備などに予算が集中してしまいます。 家の周りの外構の工事は家づくりの中で一番最後に順番が回ってくるため、どうしても予算が苦しくなりがちです。 そして、お庭の土を入れ替えるような見えない工事は、見積もりの紙の上でいちばん最初に削られやすい部分でもあります。
表面に芝生さえ張ってしまえば、土の中にパイプが埋まっていようがいまいが、建物の引き渡しのときの見た目はまったく同じだからです。
でも、一年後、二年後にはっきりとその差が現れます。
建物を一番長く美しく見せてくれるのは、数年後にしっかりと根を張って元気に育った植物たちです。
予算が足りないからといって、無理をして敷地全体にうすっぺらい芝生を張る必要はありません。 そんなときは面積を半分にして、一番景色が良くなる場所だけにしぼってください。 そして浮いたお金で、まずは見えない土や水はけの工事にしっかりとお金をかけてみてください。
きちんとした見えない土台の上で元気に育つ芝生は、毎日の暮らしを生き生きとさせる最高に価値のある投資になります。
今日はここまで。