ガジェット好きの建築設計事務所所員のつぶやき

ここでは日々の思ったことを深堀りします。

本当に賢い建築コストの抑え方と、これからのお金の話

最近、スーパーでの食料品でも目に見えて高くなりましたね。実は今、建物をつくる世界でも、これと全く同じ、いや、それ以上に大きな変化が起きています。今日は少しだけ、これからの建物づくりにどうしても付きまとってくる「お金」の話をしようと思います。



私は元々、建設現場で現場監督(現場代理人といいます)をしていました。泥臭い現場の最前線で、木切れ一つ、釘一本から、どの職人さんがどれくらい働けばいくらかかるのかという「原価」や「工事コスト」の計算と毎日向き合ってきました。 そして現在は、まっさらな企画の段階から建物の完成までを見届ける、設計の仕事をしています。 つまり、デザインを描く設計者の目線と、それを実際に組み立てる現場の目線の、両方から建物の「お金」を見てきたことになります。


そんな私から見て、最近の建築業界は少し戸惑ってしまうくらい、色々なものの値段が上がっています。「なぜ、そんなことになっているの?」と思うかもしれません。


しかし理由は一つではありません。元をたどるのであれば、今回の物価の急上昇は遠い外国で起きている争いごとの影響や物流の法律が変わった影響といわれています。


どんな理由が物価の上昇に影響があったかは、私たちがコントロールできることではないため、原因の究明よりはこれからをどうしてゆくかに力を入れた方がよいと思います。
また、来年にはまた昔の安い値段に戻るだろうやもう少し待とうと軽く考えるのは、得策ではありません。現に鉄の値段などは上がったり、横ばいになることはあっても、下がるということは近年では起こっていません。

これから家を建てようと考えている方にとって、こんな話は不安かもしれません。お金が足りなくて、夢が叶えられないのではと心配になってしまいますよね。
建物の値段が高くなっている今だからこそ、本当に賢いお金の使い方を知っておけば、十分に素敵な建物をつくることができるのです。



では、どうすればいいのでしょうか。
私が現場と設計の両方を見てきてたどり着いた答えは、「お金をかけるところ」と「節約するところ」のメリハリを、今まで以上にはっきりと分けることです。では具体的にどのようなものにお金をかけ、どのような部分を節約するのかを具体的に紹介していきましょう。



お金をかけるところの1つ目は雨風にさらされる外壁、屋根です。
こういったところの素材を安価なものを選んでしまうと、修繕に費用がかかります。素材ごとに一長一短がありますが、一度建物が完成してしまうと、壁を床を壊さないとやり直しができないからです。ここは、未来の自分を守るための投資だと思ってください。
もう少し踏み込んだ話をすると、素材の耐久年数を数字として知っておくことをお勧めします。
業界の通例として紹介しますが、一番早く劣化するのは外壁や建具廻りに使用するコーキングです。これが5年程度。日が当たる部分はそれ以下となってくるので、覚えておいてください。



お金をかけるところの2つ目はこだわりの部分です。
お気に入りの場所、素材、見た目。長く付き合っていく自分の場所に最低1つぐらいは愛着が湧くものにはお金をかけてください。
お気に入りの郵便ポストのある門柱でもよし、間接照明でもよし、季節の飾り付けが出来る床の間や玄関の一角でもスペースを設けると日々がいきいきします。



一方で、賢く節約できるところもあります。何点か例を挙げていきましょう。
建物の構造でいえば、木造が一番安いです。鉄筋コンクリートは耐久年数が長いですが、個人が50年も住めません。現代の価値観でいえば木造で十分だと思います。
キッチンやトイレなどの設備や、部屋の壁紙なども工夫ができます。毎日使うものなので一番いいものを入れたくなりますが、とりあえずは標準的でシンプルなものにしておく、というのも立派な作戦です。なぜなら、設備や壁紙は、古くなったら10年後、20年後に取り替えることができるからです。今は浮いたお金で、まずはしっかりとした「建物の箱」をつくることが大切です。
何もかもを我慢する必要がある、というわけではありません。 ただ、すべてを100点満点にしようとすると、あっという間に予算をオーバーしてしまう時代です。だからこそ、自分たちにとって一番大切なものは何かをしっかり話し合うことが必要になります。



これからの建築は、お金の話を避けては通れません。 だからこそ、設計士はただ綺麗な図面を描くだけではなく、皆さんの予算というパズルを一緒に解くパートナーでなければいけないと、私は考えています。
難しい数字の話ばかりで頭が痛くなってしまうこともあるかもしれませんが、どうか建物づくりを嫌いにならないでください。限られたお金の中で、どうやって工夫してパズルを完成させるか。そんなふうに視点を変えてみると、建物づくりはもっと奥深く、面白くなるはずです。



どうしても決められないと白旗を振っても構いません。そこからが私たちの出番だと思っています。